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『猿駅/初恋』

 新刊紹介をします。田中哲弥『猿駅/初恋』早川書房・想像力の文学(09)です。この本は著者にご献本いただきました。ありがとうございます。

〈星新一ショートショート・コンテスト〉入選者である田中哲弥の、本書は初めての短編集です。全10編。うちショートショートは「猿駅」「ユカ」「げろめさん」の3編。
猿駅/初恋.JPG「猿駅」「げろめさん」は井上雅彦監修のアンソロジー《異形コレクション》に発表されたもので、『異形コレクション讀本』光文社文庫(07)に拙論「《異形コレクション》とショートショート」を寄稿させていただいた際に採り上げました。「シュールな描写がエスカレートしていく様は、読んでいて爽快感を覚える」と書き、その印象は今も変わりません。
「ユカ」は、ショートショート作家『ホシ計画』廣済堂文庫(99)――〈星新一ショートショート・コンテスト〉入選者による、星新一追悼のショートショート・アンソロジーに発表されました。いいですねえ、この結末。私自身、こういうタイプのショートショートは全く書けませんが、読者としては好物です。聞くところによると、『猿駅/初恋』には当初は別の作品が収録されることになっていましたが、著者の希望によって「ユカ」に差し替えられたとのこと。なんだか、嬉しくなるエピソードです。
 あと、これはショートショートではありませんが、世評の高い「羊山羊」、私は本書で初めて読みました。どはははは。傑作というか、怪作ですね。

 本書の発刊を機に、短編やショートショートをばりばり書いてくれることを望みます。
〈星新一ショートショート・コンテスト〉は多くの作家を世に送り出しましたが、ショートショート集を出しているのは、私が知る限り、江坂遊、井上雅彦、藤井青銅、太田忠司、すやまたけし、矢崎存美だけです(自費出版あるいはそれに類するものは除いて)。田中哲弥があとに続いてくれると嬉しいのですが……。
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フレドリック・ブラウンの邦訳作品集

 昨日の補足です。
 フレドリック・ブラウンの邦訳作品集を紹介します。

『スポンサーから一言』東京創元社(61)
『さあ、気ちがいになりなさい』早川書房・異色作家短篇集(62)
『まっ白な嘘 フレドリック・ブラウン短編集1』創元推理文庫(62)
『未来世界から来た男 SFと悪夢の短編集』創元推理文庫(63)*現在は創元SF文庫。
『復讐の女神 フレドリック・ブラウン短編集2』創元推理文庫(64)
『わが手の宇宙』ハヤカワSFシリーズ(64)
『天使と宇宙船』創元推理文庫(65)*現在は創元SF文庫。
『スポンサーから一言』創元推理文庫(66)*現在は創元SF文庫。
『宇宙をぼくの手の上に』創元推理文庫(69)*現在は創元SF文庫。
『フレドリック・ブラウン傑作集』サンリオSF文庫(82)
『さあ、気ちがいになりなさい』早川書房・異色作家短篇集(05)*新装版。
『フレドリック・ブラウン コレクション 闘技場』福音館書店・ボクラノSF(09)
【編著】
『SFカーニバル』創元推理文庫(64)*マック・レナルズとの共編。現在は創元SF文庫。
真っ白な嘘.JPG 未来世界から来た男.JPG 復讐の女神.JPG わが手の宇宙.JPG
天使と宇宙船.JPG スポンサーから一言.JPG 宇宙をぼくの手の上に.JPG SFカーニバル.JPG
 これらのうちショートショートが数多く収録されているのは『スポンサーから一言』と『未来世界から来た男』ですが、ブラウンの奇想アイデアあふれる短編にはショートショートの魅力がたっぷり。ショートショートとか短編とか関係なく、すべてがお勧めです。
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ボクラノSF

 福音館書店の新叢書〈ボクラノSF〉第1回配本の3冊を版元より送っていただきました。担当者さま、ありがとうございます。
 この3冊はSFファンはもちろん、ショートショート・ファンにとっても見逃せないものです。
 1冊ずつ、簡単に紹介させていただきます。

◎フレドリック・ブラウン『フレドリック・ブラウン コレクション 闘技場』
闘技場.JPG まずは、なんと言ってもこれでしょう。
 この本は短編集ですが、ショートショートも多数収録されています。全14編。うち13編はロバート・ブロック編『フレドリック・ブラウン傑作集』サンリオSF文庫(82)からの、残る1編「みどりの星へ」は『さあ、気ちがいになりなさい』早川書房・異色作家短篇集(62)からの再録です。『さあ、気ちがいになりなさい』は2005年に新装版が刊行されていますので、若い方でもご存じでしょう。
 この3冊の売りは、星新一訳! ――これに尽きます。
 私、海外で一番のショートショートの書き手はフレドリック・ブラウンと思っています。特に中学生のころ、夢中になって読みました。本当に面白かったです。
 その短編やショートショートをショートショートの神様・星新一が翻訳してくれたのです。ショートショート・ファンには生唾ごっくんの組み合わせです。
 すべてのショートショート・ファンに超強烈にお勧めしておきます。
フレドリック・ブラウン傑作集.JPG  さあ、気ちがいになりなさい.JPG  さあ、気ちがいになりなさい(新).JPG
 この本と直接の関係はありませんが、お詫びと訂正を――
 私、『ショートショートの世界』でブラウンのお勧め本を紹介したのですが、そのとき、とんでもないミスをしてしまいました。
スポンサーから一言.JPG 同書57ページに、ロバート・ブロック編『スポンサーから一言』なんて書名が挙げられています。実はこれ、最初は星新一訳ということもあって、ロバート・ブロック編『フレドリック・ブラウン傑作集』を挙げていたのですが、いやいや、ショートショートということなら、こちらのほうがいいなと考え直して、最終段階で『スポンサーから一言』に変更しました。こちらはロバート・ブロック編ではないのですが、どこかでチェック・ミスが生じ、“ロバート・ブロック編”が残ってしまったのでした。
『ショートショートの世界』刊行後、『スポンサーから一言』東京創元社(61)の帯付本を入手しましたので、ここに書影を掲載します。この本の帯はかなり珍しいと思います。

◎ジョン・ウインダム『海竜めざめる』
 これは長編ですが、星新一訳というだけでもショートショート・ファンには見逃せません。私はジョン・ウインダムのファンでもありますから、嬉しさは一入です。
 本書のイラストは長新太。これも魅力ですが、ウインダム、星新一、長新太――3人とも故人というのは、無性に淋しいです……。
 私が読んだのは本書の元版であるハヤカワSFシリーズ(66)で、たぶん高校生のころだったと思います。ハヤカワSFシリーズ版、その再刊のハヤカワ文庫SF(77)の書影も掲載しておきましょう。
海竜めざめる(福音館).JPG  海竜めざめる(HSFS).JPG  海竜めざめる(ハヤカワ文庫).JPG
◎筒井康隆『筒井康隆コレクション 秒読み』
秒読み.JPG 筒井康隆の傑作集。このセレクションには見事と言うしかありません。ショートショートを含む全14編収録されていますが、どれもがタイトルを見ただけで、その面白さが脳裡に甦ってくる傑作です。筒井康隆入門書として、最良の1冊と言えるでしょう。




 以上3冊、私世代のSFファンにはたまらないラインナップです。若い方々にも、ぜひ読んでいただきたいと思います。
〈ボクラノSF〉の続刊に期待!
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『本意補遺』

 このブログでは、コメントをいただいた方にショートショート集がある場合、ご紹介させていただくことにしています。
本意補遺.JPG というわけで、斎藤肇さんのショートショート集を紹介します。
『本意補遺(ホイホイ)』AんI(87)――残念ながら商業出版ではなく、私家版です。サブタイトルに“斎藤肇・初期ショートショート集”とあります。計20編収録。
 発行元のAんIとは、〈星新一ショートショート・コンテスト〉の入選者を中心に発足した創作グループです。その会誌「せる」のレベルの高さときたら、呆れるほどでした。その編集長を務められていたのが斎藤さんです。
「せる」に関しては、ちょっとした動きがあるようですから、その動きが形になったときに改めて書こうと考えています。

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ショートショートと私

 ブログの開設から1ヶ月近くが経ちました。このブログをどんな方が読まれているのか知りませんが、なかには私のことをご存じない方もおられると思います。
 そこで、今さらですが、自己紹介を兼ねて、私とショートショートの関わりを書こうと思います。

 私がショートショートを読み始めたのは、そんなに早くはありません。はっきりと覚えてはいないのですが、たぶん中学2年のころと思います。いやもう、夢中になって読みましたねえ。
 高校1年生のとき、筒井康隆さんが「NULL」という同人誌を発刊されると知りました。筒井さんの大ファンでしたから、もちろん入会。「NULL」ではショートショートを募集していて、それまでまともに小説なんて書いたことはなかったのですが、せっかく入会したのだから、と四苦八苦して2編のショートショートを書き上げました。
 掲載されるなんて想像もしていませんでしたが、ほどなくして届いた「NULL」№2(74)を手にして、びっくり! 2編投稿したうちの1編「森―何となくWAPテーマ的な…―」が、なんと入選作として掲載されているではありませんか(眉村卓選)。――私、16歳の春でした。
 続いて投稿した作品は没でしたが、「NULL」№4(75)には「シミリ現象」が佳作掲載されました(筒井康隆選)。この「シミリ現象」は以後の私の人生に大きな影響を与えることになります。「NULL」を読んだ豊田有恒さんの目にとまり、そのころ豊田さんが編まれていたショートショートのアンソロジーに収録してくれることになったのです。その知らせが届いたのは、大学受験に失敗して、浪人生活が始まった直後でした。嬉しかったですねえ。
 その本――豊田有恒編『日本SFショート&ショート選 ユーモア編』文化出版局・FICTION NOW(77)は、私が大学に入学した直後に発行されました。――私、19歳の初夏のことです。実際に本を手にしたときは、夢を見ているような心地でした。
 その後いろいろあって、大学3年のとき、SF専門誌「奇想天外」1979年12月号にショートショート2編「目覚し時計」と「うるさい宇宙船」が掲載され、作家としてデビューします。
NULL2.JPG NULL4.JPG 日本SFショート&ショート選.JPG 奇想天外45.JPG
うるさい宇宙船.JPG 処女出版はショートショート集『うるさい宇宙船』集英社文庫コバルト・シリーズ(83)です。数え切れないくらいの作家がショートショート集を出していますが、処女出版がショートショート集という作家は、そんなに多くはないのではないでしょうか。
 2冊目のショートショート集は『夢中の人生』講談社(88)でした。このあたりからショートショートのブームに翳りが見え始め……。3冊目のショートショート集『ショートショートで日本語をあそぼう』ちくま文庫(03)を上梓するのは『夢中の人生』の15年後(!)です。
 あと、これはショートショート集ではありませんが、『DOUBLE DECADE』信・一族(99)という本もあります。私のデビュー20周年を記念してファンクラブ〈信・一族〉が出してくれた私家版作品集で、単行本未収録の短編やショートショートが25編収録されています。限定200部なんですが、あまり売れなくて(涙)、売れ残りはすべて私が買い取りました。
夢中の人生.JPG ショートショートで日本語をあそぼう.JPG ダブル・ディケイド.JPG ショートショートの世界.JPG
 10年くらい前からショートショートの研究および収集を始め、その成果の第1弾が『ショートショートの世界』集英社新書(05)です。調べれば調べるほどショートショートの世界は奥深く、私、ますます泥沼にはまっていきます。
 このブログでは、そんな私がショートショートに関することを思いつくままに書き綴っていきたいと考えています。どうぞご愛読のほどを。
編集会議.JPG
 最後に。
 あまり知られていないと思うので、雑誌を1冊紹介しておきます。
「編集会議」2008年9月号――星新一特集号で、オールカラーの20ページは読みごたえがあります。私も「『神様』と呼ばれた星新一とショートショートの歴史」を寄稿させていただきました。
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星新一の自選集

「星新一のお勧めショートショート集は?」と問われたら、迷わず『ボッコちゃん』と答えます。いえ、星新一とは関係なく「お勧めショートショート集は?」と問われても『ボッコちゃん』を挙げます。
ボッコちゃん.JPG『ボッコちゃん』新潮文庫(71)は星新一初の文庫本です。
「あとがき」には「これは自選短編集。新潮社発行の『人造美人』と『ようこそ地球さん』収録のものを主に、そのほか他社より発行されている短編集の作品のなかから選んで加え、五十編をまとめたというわけである。特徴のひとつは初期の作品が多いという点。(中略)/もうひとつの特徴は、短い作品を多く収録してあるという点。(中略)/さらに特徴をもうひとつあげるとすれば、作品のバラエテイを多くするよう心がけた」と書かれています。
 つまり、初期の作品から星新一自らが選んだ傑作50編が収録されているわけですね。とにかく、文句なしに面白い! この本を面白く読めなかったとしたら、その人はショートショートには向いていないと思います。
 どの作品集からどんな作品が採られているのか明記されていませんので、以下に記しておきます。

続きを読む。


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『きまぐれロボット』

気まぐれロボット(理論社).JPG 私の世代ですと、星新一の代表的なショートショートと言えば「ボッコちゃん」や「おーい でてこーい」なんですが、新しいファンにとってはそうではなく、「きまぐれロボット」が最もポピュラーな存在になっているような気がします。
 若いファンは知らないかもしれませんが、初刊本は『きまぐれロボット』ではなくて『気まぐれロボット』というタイトルでした。1966年に刊行された、理論社の名作プレゼントの1冊。その後、1972年に角川文庫に収録された際、『きまぐれロボット』と改題されたのです(5編増補)。
きまぐれロボット(角川文庫).JPG 単行本が出て、何年かあとに文庫化。このパターンは星新一のほかの著作と同じです。1986年、講談社英語文庫の1冊として英訳本も出ていますが、それはともかく――
 1999年、理論社から新・名作の愛蔵版として新装版が発行されたのを皮切りに、2005年にはフォア文庫に収録、2006年には角川文庫の新装版と、1997年に逝去された後10年足らずの間に3回も再刊されました。これは極めて特異なケースと言えるでしょう。

THE CAPRICIOUS ROBOT.JPG きまぐれロボット(理論社).JPG きまぐれロボット(フォア文庫).JPG きまぐれロボット(角川文庫)新.JPG 
きまぐれロボット(DVD).JPG 2004年には、10話がアニメ化され、Yahoo JAPAN!特設サイトにて無料配信されました(11月1日~30日)。これはDVD化されていますから、容易に観ることができます。
 さらに最近では先月、『きまぐれロボット DVD+CD』がリリースされました。
 私が角川文庫の『きまぐれロボット』を読んだのは、たぶん中学生のころ――今から35年以上前です。こんなに注目される日が来るとは想像もしていませんでしたので、驚いています。

 以下、マニアック情報です。
 学校の副教材ですが、日本標準・青空文庫『きまぐれロボット』なんて本もあります。24ページの薄い本で、表題作と「火の用心」「ネコ」を収録。
 この本は表紙をマイナー・チェンジして、何度か刊行されているようです。所有しているのは写真の2冊ですが、発行日が記載されていなくて、いつ発行されたものなのか、さっぱりわかりません。左側(青空文庫)の定価が100円、右側(あおぞら文庫)が150円ですから、左側が古いのは間違いないですが……。
きまぐれロボット(青空文庫).JPG きまぐれロボット(あおぞら文庫).JPG
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『ポケット・ミステリィ』

 先日、天瀬裕康『停まれ、悪夢の明日』近代文藝社(88)を採り上げました。この本もそうですが、『ショートショートの世界』刊行時に未入手だったため同書で触れることができず、あとで「しまった~」とホゾを噛んだ本は何冊もあります。
ポケット・ミステリィ.JPG そのなかでも最たるものは、中島河太郎編『ポケット・ミステリィ』光書房(59)です。
 この本も、存在自体は知っていましたが、内容が今ひとつはっきりせず、触れることができませんでした。タイトルからしてショートショート・アンソロジーと思えるのですが、現物を確認しないことには、何とも言えません。
 この本の存在は、江戸川乱歩編『推理教室』河出文庫(86)の解説(山前譲)で知りました。
          *               *               *
 本書「推理教室」は、昭和三十四年七月に江戸川乱歩氏の編集で河出書房新社から刊行された単行本の文庫化である。(中略)この頃「推理試験」「続推理試験」「一分間ミステリ」(いずれも荒地出版 昭34)といった海外の謎解き短篇アンソロジーが出版され、週刊誌のクイズ・ブームや推理小説が一般的に広く読まれるようになった状況の中で本書は出版されている。また、時を同じくして「ポケット・ミステリ」(光書房 昭34 23編収録)や、NHKの推理番組から生れた犯人当て形式の「素人探偵局」(三笠書房 昭35 13編収録)「私だけが知っている」(早川書房 昭36 9編収録)といった日本作家のアンソロジーが刊行されたが、本書は一連のこの類いのアンソロジーの先駆けとなったという意味に加えて、収録された作品や作家の豊富な点から、画期的かつ意欲的な企画だったといえよう。
          *               *               *
1分間ミステリ.JPG これを読む限り、『ポケット・ミステリィ』はショートショート集ではなく、推理クイズ集であると考えられます。
 私、推理クイズは一見ショートショートに近い存在に見えますが、要は小説の形を借りたクイズであり、ショートショート(小説)とは別のものと考えていますから、さほど重要視していません。もし『ポケット・ミステリィ』が推理クイズ集であるならば、そんなに気にすることはないのですが、二宮佳景編『一分間ミステリ』荒地出版社(59)も挙げられているとなれば話は別です。
推理試験.JPG 同時に書名の挙げられている二宮佳景編『推理試験』荒地出版社(59)、A・リプレイ『続・推理試験』荒地出版社(59)の姉妹編という形で発行されています(帯にも書かれています)が、この2冊が推理クイズ集であるのに対して、『一分間ミステリ』は純然たるショートショート・アンソロジーなのです(こちらは『ショートショートの世界』で紹介しました)。
 1冊でも趣旨と違う本が紛れ込んでいるならば、もう1冊紛れ込んでいても不思議ではありません。気にはなりつつも、なかなか入手することができず……。
続・推理試験.JPG その後の調査で、やはり――と言うべきではないのかもしれませんが、『ポケット・ミステリィ』は推理クイズ集ではないと判明しました。何とか入手することができ、内容を確認しますと、もう見事にショートショート・アンソロジーです。
 1959年7月という、まだ日本に“ショートショート”という言葉が紹介されていなかった時代のショートショート・アンソロジー! 『一分間ミステリ』と同じ年に発行され、片や海外作家の、片や日本人作家のアンソロジー。――両書とも、日本のショートショート出版史において極めて重要と思います。

 余談ながら――
 戸山一彦『ショート・ショート 独りでほほえむ本』秋田書店・サンデー新書(66)という本があります。この本も『ショートショートの世界』刊行時には未入手で、どんな内容なんだろうと気になる存在でした。
ショート・ショート.JPG 昨年だったか一昨年だったか、ようやく入手。その内容は――艶笑コント集でした。ピンク・ジョークよりは長く、いちおう小説っぽい体裁は成していますが、これはショートショート集とは言えないですね。
 こういう内容の本に『ショート・ショート』というタイトルを付けた著者(あるいは編集者かもしれませんが)には、「あっぱれ!」と言うしかありません。1966年――まだまだショートショートという言葉が曖昧に受け取られていた時代の産物なのでしょうね。
 この本も『ショートショートの世界』で紹介しておけば面白かったと思っています。
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「宇宙塵」

 昨日の記事「SFファンダム発のショートショート集」の続きです。
宇宙塵201.JPG あんな記事を書いたせいか、SF同人誌「宇宙塵」が無性に懐かしくなりました。私、1度も作品を掲載していただいたことはありませんが、高校生のころからの会員なのです(現在も)。
 最新の201号(2008年6月発行)を手に取ってみました。「ワールドコン特集」と「宇宙塵アーカイヴス」の2本立てで、どちらも読み応えがあるのですが、私にとって最も印象に残っているのは、最終ページに記載されている戸倉正三の訃報でした。ショートショートの大先輩に――合掌。

 さて。
「宇宙塵」は日本ショートショートの歴史を考える上でも非常に重要な存在です。関連書を紹介しておきましょう。
 まずは傑作選です。「宇宙塵」は同人誌でありながら、商業出版で3度も傑作選が編まれているのです。
 石川喬司・柴野拓美編『日本SF・原点への招待Ⅰ 「宇宙塵」傑作選』講談社(77)
 石川喬司・柴野拓美編『日本SF・原点への招待Ⅱ 「宇宙塵」傑作選』講談社(77)
 石川喬司・柴野拓美編『日本SF・原点への招待Ⅲ 「宇宙塵」傑作選』講談社(77)
 柴野拓美編『破局のおすすめ 新「宇宙塵」SF傑作選Ⅰ』河出文庫(87)
 柴野拓美編『無限のささやき 新「宇宙塵」SF傑作選Ⅱ』河出文庫(87)
 柴野拓美編『宇宙塵傑作選Ⅰ 日本SFの軌跡』出版芸術社(97)
 柴野拓美編『宇宙塵傑作選Ⅱ 日本SFの軌跡』出版芸術社(97)
日本SF・原点への招待Ⅰ.JPG 日本SF・原点への招待Ⅱ.JPG 日本SF原点への招待Ⅲ.JPG 破局のおすすめ.JPG 無限のささやき.JPG 宇宙塵傑作選Ⅰ.JPG 宇宙塵傑作選Ⅱ.JPG
 河出文庫版の傑作選には長めの作品ばかりが採録されていますが、講談社版、出版芸術社版にはショートショートも多数収録されています。機会があれば、ぜひ読んでいただきたいと思います。
「宇宙塵」の歩みを知るには、宇宙塵編『塵も積もれば 宇宙塵40年史』出版芸術社(97)、その改訂版である『いつまでも前向きに 塵も積もれば 宇宙塵40年史―改訂版―』宇宙塵(06)が最適でしょう。主宰者・柴野拓美へのインタビューは圧巻です。
 また掲載作品の詳細を知るには、森東作編『宇宙塵INDEX』SFファングループ資料研究会(77)という労作があります。「宇宙塵」本誌の創刊号(1957年5月)から178号(1977年5月)まで、それとパロディ誌である「宇宙鹿」「宇宙塵」も含めての詳細なインデックスです。
 実は……。ここで紹介するのは憚られるようなものなのですが、『宇宙塵INDEX Ⅱ』というのもあります。これ、私の編集によるものでして……。1986年、「柴野拓美 一病息災を祝う会」が開かれると聞いて、何かSFファンらしいお祝いができないかとSFファンの友人たちと相談し、結果、こんなものを作ってしまったのでした。ちなみに、対象としたのは「宇宙塵」179号(1980年8月)から185号(1984年5月)までの7冊だけで、ほとんど実用には向きません。
塵も積もれば.JPG いつまでも前向きに.JPG 宇宙塵インデックス.JPG 宇宙塵インデックス2.JPG
 最後に、先ほどちらと誌名が出た「宇宙塵」のパロディ誌を紹介しておきます。
「宇宙鹿」№3(1962年11月)
「宇宙塵」№2(1976年3月)
「宇宙鹿」創刊号(1990年12月)
「宇宙鏖」12月創刊準備号 №-1(2004年12月)
 1962年発行の3号に始まって、2号、創刊号、創刊準備号と、ちょうど14年ごとに発行されています。次回の発行は2018年になるのでしょうか。
 いかにもSFファンらしいお遊びで、私、こういうのは大好きです。
 なお、「宇宙鹿」には「ショートショートの書き方」、ぼっこ新一「ホシちゃん」なんて作品も掲載されています。
宇宙鹿.JPG 宇宙塵紙.JPG 宇宙馬鹿.JPG 宇宙鏖.JPG
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SFファンダム発のショートショート集

『ショートショートの世界』でSF同人誌「宇宙塵」を紹介する際、私は以下のように書きました(114~115ページ)。
          *              *               *
――前略――無名のファンライターのなかにも、素晴らしいショートショートを書いていた人がたくさんいます。
 なかでも特筆すべきは戸倉正三でしょう。あ、いや、戸倉正三の場合、「SFマガジン」「ミステリマガジン」「ヒッチコックマガジン」といった商業誌にも作品を発表していますから、無名のファンライターと言っては失礼なのですが、まあ、プロ作家かファンライターかという議論はさておき――
どこにもある・どこにもない話.JPG 戸倉正三が「宇宙塵」に発表していた作品群は、これぞショートショート、という感じで、質、そして量の問題も含め、私は非常に高く評価しています。戸倉正三には『どこにもある・どこにもない話』(柳正堂書店67)という、おそらく自費出版に近い形で出版されたと思われるショートショート集があるのですが、残念ながら入手は困難です。私にできることは、せめて本書に書影を掲載することだけです。
 これまたファンライターと言っては失礼ですが、川島ゆぞも「宇宙塵」に洒落たショートショートや短編を発表していました。それらのほとんどは『タイムましん』(ユニバース出版社97)という作品集に収録されています。
          *              *               *
 戸倉正三も川島ゆぞも、限りなくプロ作家に近くて、プロと言ってもいいのかもしれないのですけれど、そうとは言い切れない存在です。
タイムましん.JPG『どこにもある・どこにもない話』にも『タイムましん』にも、「宇宙塵」や「NULL」といったSF同人誌に発表された作品が多数収録されていて、中学生のころからSFファンダムで遊んできた私は、こういう本を見ると無性に嬉しくなってしまいます。しかもショートショートとなると、なおさらです。
『ショートショートの世界』刊行後、同じようなショートショート集を3冊入手しましたので紹介しようと思いますが、その前に、お詫びと訂正をさせていただきます。
>戸倉正三の場合、「SFマガジン」「ミステリマガジン」「ヒッチコックマガジン」といった
>商業誌にも作品を発表しています
 と書きましたが、これは間違いで、戸倉正三が「ミステリマガジン」に寄稿した事実はありません。今となっては、なぜこんなことを書いたのか定かではないのですが、私の勝手な思い込みから、つい筆が滑ってしまったのだと思います。いいかげんなことを書いて、申しわけありませんでした。

停まれ、悪夢の明日.JPG さて、気を取り直して――
 まずは天瀬裕康『停まれ、悪夢の明日』近代文藝社(88)です。この本は『ショートショートの世界』刊行時には知りませんでした。いや正確に言うと、存在自体は知っていましたが未入手で、内容を知らなかったのです。
 入手して著者の本名が「渡辺晋」と知り、大袈裟な表現ではなく、のけぞりました。ビッグネーム・ファンとして、その名は私も若いころからよく知っていたからです。「SFマガジン」連載の「空想不死術入門」は本当に楽しく読んだものでした。(ついでに書いておくと、私が初めて印税をいただいた豊田有恒編『日本SFショート&ショート選 ユーモア編』文化出版局(77)には「スカイラブ・ラブ記」が収録されています)
 この本には32編収録。SF同人誌に掲載された作品は少ないですが、『どこにもある・どこにもない話』や『タイムましん』と同じ匂いを感じます。『ショートショートの世界』で紹介できなかったのが残念でなりません。

惑星催眠術.JPG 続いては、新居澄人『惑星催眠術』沖積舎(06)――これは『ショートショートの世界』刊行後に出版された本です。著者は1966年生まれ、2005年没。ご遺族が追悼の意味を込めて作られたものです。
 著者は石原藤夫主宰のSFファングループ〈ハードSF研究所〉の会員で、この本には石原藤夫が「ユニークな才能を惜しむ」という序文を寄せ、夭逝を悼んでいます。享年39。ほんと、若すぎると思います。
 計25編収録。うち15編は〈ハードSF研究所〉の会誌「Hard SF Laboratory」に掲載、10編は「SFマガジン」の〈リーダーズ・ストーリイ〉に入選した作品です。

深田亨作品集.JPG 最後は同人誌ですが、『風の翼 35周年記念 深田亨作品集』創作研究会=北星航路(07)を紹介します。
 著者の深田亨は〈星新一ショートショート・コンテスト〉の第4回(1982年)で、「びん」が優秀作に選ばれました(青山章二名義)。それ以前にも、眉村卓編『チャチャ・ヤング ショート・ショート』講談社(72)にも3編が収録されています。超ベテランの書き手なのですね。
 新しいところでは、ショートショート作家『ホシ計画』廣済堂文庫(99)や井上雅彦監修『ひとにぎりの異形』光文社文庫・異形コレクション(07)にも寄稿しています。
『深田亨作品集』には42編収録。初出は明記されていませんが、多くは同人誌に掲載されたものと思われます。

 以上、3冊を紹介しました。
 こういった本はまだまだたくさん出ていることと思います。情報をお寄せいただければ幸いです。
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『ショートショートの広場』

 阿刀田高編『ショートショートの花束1』講談社文庫(09)が発売になったようです。ようです、と書いたのは、まだ現物を目にしていないからでありまして……。
 昨日、近所の書店に買いに行ったんですが、残念ながら見当たりませんでした。私、田舎に住んでいまして、近所にある書店は本屋というより雑誌&コミック屋なんです。それでも講談社文庫くらいは買えると思ったんですけどね。いや、さすがに入荷はしたでしょうが、冊数が少なく、売れてしまったものと思います。

 このブログをお読みになっている方ならご存じと思いますが、『ショートショートの花束1』は『ショートショートの広場』のリニューアル・スタート第1弾です。
 講談社(単行本)の星新一編『ショートショートの広場』が発行されたのは1979年でした。その後、講談社文庫での刊行になり、編者は阿刀田高に変わり……。今年でちょうど30年、講談社文庫版は20巻を数えます。リニューアルするには、いいタイミングですね。
 ここで、『ショートショートの広場』の歩みをまとめておくことにします。

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ルパン ショート・ショート コンテスト

「琥伯 ルパン」という雑誌がありました。「問題小説SPECIAL」として1980年夏季号から1981年秋季号まで、計6冊が発行されたミステリー専門誌です(徳間書店発行)。
ルパン1.jpg この雑誌は誌名がややこしくて、扱いに困っています。書影を見ていただければわかりますように、創刊号から3号までは「琥伯」と「ルパン」が併記された誌名(1、2号は「琥伯」がメイン。3号では「ルパン」がメイン)なのに、4号以降、「琥伯」の表記は消えるのです。編集部が何を考えていたのか、よくわかりませんが、それはともかく――
 このころ、まさにショートショートはブームの最中にあり、この雑誌でもショートショートのコンテストが行なわれていました。――〈ルパン ショート・ショート コンテスト〉です。
 募集要項が発表されたのは1981年冬季号(第3号)で、規定枚数は1枚~15枚、選者は第1回が都筑道夫、第2回が阿刀田高となっています。都筑道夫と阿刀田高が交互に選者を務めるショートショート・コンテスト! なんて豪華なのでしょう。
 ちなみに、この号には阿刀田高と都筑道夫の対談「書きたいあなたのためのショート・ショート調理法 入るは易く極めるは難し」も掲載されています。この対談、本当に面白く読みました。
ルパン2.jpg 第1回の結果発表は1981年春季号(第4号)。都筑道夫選。応募総数376編。入選は6編で、優秀賞に当たるルパン賞は「ただいま同棲中」木村研。
 第2回の結果発表は1981年夏季号(第5号)。阿刀田高選。応募総数672編。入選は5編で、ルパン賞は「テーマソング」娑婆ドゥビ也。このペンネームに関しては、「それにしてもこの人のペンネームは――ご当人はなにか意図があってのことだろうが、あまり感心できるものではない」と選評で書かれています。そりゃそうでしょう(笑)。
 第3回の結果発表は1981年秋季号(第6号)。都筑道夫選。応募総数543編。入選は5編で、ルパン賞は「消防車が遅れて」井上雅彦。――もちろん、あの井上雅彦です。
 雑誌の終刊とともにコンテストも消滅します。「問題小説」に場を移して継続されていれば、『ショートショートの世界』で大きく紹介したと思うのですが……。残念!
ルパン3.jpg ルパン4.jpg ルパン5.jpg ルパン6.jpg
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ミステリ専門誌のショートショート特集

 かつて、さまざまな雑誌でショートショート特集号が組まれました。それらすべてをチェックするのは私の手に負えませんが、重要と思われる雑誌に関しては調査しています。
 今日はそのなかから、3種のミステリ専門誌を紹介しましょう。

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アメリカ雑誌のアンソロジー

 アメリカの出版事情に関しては全くと言っていいほど知らないのですが、小説専門誌以外の雑誌(いわゆるスリック・マガジン)でも積極的に短編小説を掲載し、そのレベルはかなり高いようです。
 その代表格が「ニューヨーカー」誌です。日本で出版されたアンソロジーを見ると、ショートショートと言えるかどうかはともかく、短い短編小説も多数収録されていて、当然、私の研究&収集対象になります。
「ニューヨーカー」誌だけではなく、「マドモアゼル」誌や「プレイボーイ」誌のアンソロジーも日本で出版されています。いずれも短編集ですが、ショートショートという見地から見ても、見逃すことはできない作家、そして作品が収録されています。
 こういったアメリカの雑誌については、『ショートショートの世界』では触れることができませんでした。ページ数の関係だけではなく、ショートショートと掌編小説との境界にある作品が非常に多く、採り上げるべきか迷ったという理由もあります。
 以下、日本で発売されたアンソロジーのリストを紹介しておきますので、実際に読んでみてください。収録されている作家を眺めると、まさに多士済々の顔ぶれです。

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5分間新書

『ショートショートの世界』において、ページ数の関係で割愛したことは多数ありますが、発行時に資料不足で書けなかったり推測で書いてしまったりしたこともあります。
 今回、その1つを――

『ショートショートの世界』87~88ページで、私は以下のように書きました。

 特筆すべきは、新風出版社の〈5分間新書〉です。その全容は明らかではないのですが、一九六九年から七〇年にかけて、私が知っているだけでも、多岐川恭監修『殺しのゲーム』、都筑道夫監修『海底の人魚』、筒井康隆監修『夢からの脱走』、寺内大吉監修『競馬いのち』、池波正太郎監修『黒い太刀風』、青山光二監修『幻の賭博師』と、六冊ものアンソロジーを刊行しているのです。
 私が所有しているのは『海底の人魚』と『夢からの脱走』だけなのですが、前者は純粋なショートショート・アンソロジー、後者はショートショートを数多く含むアンソロジーです。現物未確認ですが、ほかの本もおそらくは似たような内容ではないかと思われます。
 全容を掴めていない現在、確かなことは言えないのですが、この〈5分間新書〉はもしかしたら、日本初(あるいは唯一)のショートショート叢書なのかもしれません(同時期、やはり新風出版社から多岐川恭監修『悪徳ミステリィ』というアンソロジーも出ていて、短い作品が数多く収録されているようですが、〈5分間新書〉の一冊ではないようです)。

 その後、友人(このブログに最初にコメントを寄せてくれた北原尚彦さんですが)の協力を得て、未確認本の内容が判明しました。『海底の人魚』と『夢からの脱走』以外でショートショート・アンソロジーと言えるのは『殺しのゲーム』だけで、さらに『悪徳ミステリィ』はその改題新装版(〈5分間新書〉に非ず)とわかったのです。
「もしかしたら、日本初(あるいは唯一)のショートショート叢書なのかもしれません」なんて、いま思えば、とんでもないことを書いてしまったもので、情けないというか申しわけないというか……。
海底の人魚.JPG 夢からの脱走.JPG 殺しのゲーム.JPG 悪徳ミステリィ.JPG
『殺しのゲーム』以外にも改題新装版は出ていて、情報を入手している限りで書いておきますと――
◎多岐川恭監修『殺しのゲーム』→『悪徳ミステリィ』
◎池波正太郎監修『黒い太刀風』→『隠密十郎兵衛』
◎青山光二監修『幻の賭博師』→『ガンファイター』

 幸いにして、ショートショートの資料として必要な『殺しのゲーム』『悪徳ミステリィ』は、2冊とも意外に早く入手することができました。詳しいことは覚えていませんが、情報をゲットしてから、わずか数ヶ月だったと思います。どちらも入手が容易な本ではありませんから、超ラッキーだったと言えます。古本の神様に、感謝感謝であります。

 余談ながら――
動物のモーレツ恋愛.JPG 昨年でしたか一昨年でしたか、蔵書を整理していたら、今泉英一『動物のモーレツ恋愛』なんて本が出てきました。――〈5分間新書〉の1冊です。こちら、動物のセックス事情を解説したノンフィクション。
『悪徳ミステリィ』の袖にある広告を見ますと、ほかにも〈5分間新書〉で、謝世輝監修『最新科学の図解』、寺内大吉・阿部牧郎共著『追いこみの広野』、興津要『これが艶笑落語だ 70選』なんて本も出ているようでして……。
 改めて、声を大にして、いや、活字を大にして書きます。
〈5分間新書〉はショートショートの叢書ではありません。いいかげんなことを書いてしまい、申しわけありませんでした。

【追記】2010年5月27日
 関連記事を書きました。→こちら
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ショートショートの迷宮(第3回)

◆1970年代の叢書あれこれ

 1970年代というのは、私にとって忘れられない時代である。
 ハヤカワSF文庫が創刊されたのは1970年だ。ちょうどそのころ、E・R・バローズをはじめとするスペースオペラや海外古典SFに夢中になっていた私は、ハヤカワSF文庫の新刊を待ちわび、むさぼるように読んだ。創刊から数年は、おそらく全巻読んでいたのではなかろうか。
 また1970年代は、私がショートショートというものを知る前に発行されたショートショート集が続々と文庫化され始める時期でもあった。『ボッコちゃん』新潮文庫(71)を皮切りに、筒井康隆『にぎやかな未来』角川文庫(72)、豊田有恒『自殺コンサルタント』ハヤカワ文庫JA(73)、眉村卓『C席の客』角川文庫(73)、小松左京『鏡の中の世界』『ある生き物の記録』ハヤカワ文庫JA(74)、福島正実『SFの夜』ハヤカワ文庫JA(74)、高齋正『ムーン・バギー』ハヤカワ文庫JA(74)、石川喬司『魔法つかいの夏』ハヤカワ文庫JA(75)など……。これまた私はむさぼるように読んだものである。
 そんな1970年代、日本のショートショート出版史において重要な叢書が発刊された。

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『二壜の調味料』

 このブログでは、ショートショート・ファンから見て、「これだ!」と思われる新刊も紹介していこうと思っていますが……。
 私、本をたくさん買います。ほとんどは古本ですが、とにかくたくさん買います。買う本の数が読める本の数よりも圧倒的に多いです。買った本をすぐに読むなんてことは滅多にありません。もちろん、少しは目を通しますが、通読するのはいつになるか……。ちゃんと読んでから内容紹介をするのがいいとはわかっていますが、そんなことをしていたら、時期を逸するのは確実です。
 というわけで、気になる新刊があれば、読んでなくても紹介することにしました。

 ブログ初の新刊紹介は、ロード・ダンセイニ『二壜の調味料』ハヤカワ・ミステリ(09)です。
二壜の調味料.jpg 昨日買ったばかりで、もちろんまだ読んでいませんが、表題作を含む26編収録の短編集というだけで、間違いなくショートショート・ファン必読の本と断言してしまいます。
「二壜の調味料」、これは本当に傑作と思います。初めて読んだのはいつだったのか、全く覚えていないのですが、おそらく江戸川乱歩編『世界短篇傑作集3』創元推理文庫(60)に収録された「二壜のソース」だったと思います。いやあ、驚きましたねえ。この作品によって、それまで私がダンセイニに抱いていたイメージは完全に覆されました。
 遡って、ダンセイニ初体験はいつだったのか、記憶をまさぐってみると――
 これまた、はっきり覚えていないのですが、「幻想と怪奇」誌の創刊号(1973年4月号)に掲載されていた「女王の涙を求めて」である可能性が非常に高いです。「幻想と怪奇」誌は創刊から購読していましたし、当時は買った本や雑誌は隅から隅まで読んでいましたから。
 初めて著作を買ったのは、たぶん『ペガーナの神々』創土社(75)で、その次は長編『エルフランドの王女』月刊ペン社・妖精文庫(77)あたりでしょう。2冊とも楽しく読んだ記憶はありますが、私の嗜好とは少しずれていて、「ダンセイニ、大好き!」とまでは至りませんでした。
 ダンセイニの幻想短編は、確かに短いものが多いのですが、ショートショートとは別の世界の産物であると思います。ショートショートではないから駄目、なんてことはないのですが、やはり私は若いころから、短い小説にはショートショートっぽさを求めていたのかもしれません。
 しかし、先にも述べましたように、「二壜のソース」――これを読んだのは『ペガーナの神々』や『エルフランドの王女』から何年も経ってからと思いますが――で、私のダンセイニ観は一気に変わりました。まさに、私好みの作品だったのです。
 読んでいない段階ではあれこれ言うのもおかしな話ですが、今回の『二壜の調味料』には私好みのダンセイニがいっぱい詰まっているものと思います。なるべく早く読みたいものです。
世界短篇傑作集3.JPG 幻想と怪奇1.JPG ペガーナの神々.JPG エルフランドの王女.JPG
 ご参考までに、ダンセイニの邦訳短編集リストを挙げておきます。
『ダンセイニ幻想小説集』創土社(72)
『ペガーナの神々』創土社(75)
ダンセイニ幻想小説集.JPG『ペガーナの神々』ハヤカワ文庫FT(79)
『魔法の国の旅人』ハヤカワ文庫FT(82)
短篇集 妖精族のむすめ』ちくま文庫(87)
『ヤン川の舟唄』国書刊行会・バベルの図書館(91)
『世界の涯の物語』河出文庫(04)
『夢見る人の物語』河出文庫(04)
『時と神々の物語』河出文庫(05)
『最後の夢の物語』河出文庫(06)
『二壜の調味料』ハヤカワ・ミステリ(09)
ペガーナの神々.JPG 魔法の国の旅人.JPG 妖精族のむすめ.JPG ヤン川の舟唄.JPG
          *               *               *
 昨日はもう1冊、デニス・ジョンソン『ジーザス・サン』白水社(09)も買いました。
ジーザス・サン.jpg ダンセイニと違って、こちらは全く予備知識のない作家です。どのような作風なのか、全く知らないのですが、とにかく短い短編集であることは確かですし、妙にそそられるものを感じましたので、買うことにしました。
 これもなるべく早く読まないといけないのですが、いや、その前に、あれも、これも……。
 そんな具合で、積読本が増えていくのです。ふう……。
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ショートショートの迷宮(第2回)

◆世界ユーモア文学全集

 昨今、異色作家短編がブームになっていて、早川書房の〈異色作家短篇集(全18巻)〉の再編集新装版(全20巻)が刊行されたりしている。〈異色作家短篇集〉は以前にも再編集新装版(全12巻)が出ており、2度目の新装版ということになる。〈異色作家短篇集〉はショートショートの歴史から見ても重要な叢書であり、『ショートショートの世界』のなかでも紹介した。
 最初の〈異色作家短篇集(全18巻)〉が発行されていた1960年代前半に、やはりショートショートの歴史を振り返る際に重要と思われる叢書が出ていたことは、あまり知られていない。筑摩書房の〈世界ユーモア文学全集(全18巻)〉である。
 この叢書は1960年から63年にかけて刊行された。短編のみの叢書ではなく、長編も収録されているが、長編を除いて再編集したら、ショートショートの叢書になると言ってもいい。

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西谷史のショートショート集

 今日の夕方にコメントをいただいた西谷史さんは『女神転生』シリーズなどの長大な小説で知られている作家ですが、実はショートショートでデビューされ、2冊のショートショート集を上梓されています。ショートショート集を出されている作家さんにコメントをいただくのは、西谷さんが初めてとなりますね。

『2020年ホログラフ元年』日本ソフトバンク(86)
『三番目のワッ!』毎日新聞社(88)
2020年ホログラフ元年.JPG  三番目のワッ!.JPG
 機会があれば、ぜひ読んでみてください。

 メイン企画とは別に、ショートショート集を出されている方にコメントをいただいたら、こんな感じで紹介していきたいと思います。

【追記】4月27日
 追加情報を書きました。→こちら
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フランク・R・ストックトン 邦訳リスト

「ショートショートの迷宮(第1回)」の補足として、「女か虎か」「三日月刀の促進士」以外の邦訳リストを挙げておきます。読書のご参考に。

【短編】
「幽霊の移転」――岡本綺堂『世界怪談名作集』改造社・世界大衆文学全集(29)
「幽霊の引越し」――「エラリイクイーンズミステリマガジン」1965年1月号
「戦争請負います」――福島正実・野田昌宏・伊藤典夫編『世界のSF(短篇集)古典篇』早川書房・世界SF全集31(71)
「後家の大航海」――井上一夫訳編『アメリカほら話 PartⅡ』筑摩書房(85)
「幽霊の移転」――岡本綺堂編訳『世界怪談名作集 下』河出文庫(87)
「クリスマスの恋」――風間賢二編『クリスマス・ファンタジー』ちくま文庫(92)
「幽霊のひっこし」――ストックトンほか『幽霊のひっこし』講談社・青い鳥文庫Kシリーズ(96)
世界SF全集31.JPG アメリカほら話PartⅡ.JPG 世界怪談名作集・下.JPG クリスマス・ファンタジー.JPG
【童話】
『怪じゅうが町へやってきた』偕成社・世界の幼年どうわ12(67)
『みつばちじいさんのたび』学習研究社・新しい世界の幼年童話12(69)
『木の精のふしぎなキス』文研出版・文研児童読書館(75)
『みつばちじいさんの旅』童話館出版・子どもの文学・緑の原っぱシリーズ3 (98)
怪じゅうが町へやってきた.JPG みつばちじいさんのたび.JPG 木の精のふしぎなキス.JPG
 私の知る限り、以上です。
 ストックトンの短編集、どこかの出版社で企画されないかなあと思っています。タイトルを『女か虎か』にすれば、けっこう売れそうな気がするんですが……。

『女か虎か』と言えば――
 高木彬光に同タイトルの長編ミステリがあります。ストックトン作品へのオマージュみたいなのですが、読んでいないので、何とも言えません。少なくともパロディや続編ではなさそうです。
 書影は左から――双葉新書(70)、文華新書(76)、トクマノベルス(77)、角川文庫(79)です。
女か虎か(双).JPG 女か虎か(文華).JPG 女か虎か(徳).JPG 女か虎か(角).JPG
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ショートショートの迷宮(第1回)

   まえがき

 2005年9月、私は『ショートショートの世界』(集英社新書)を上梓したが、その「あとがき」にも書いたように、ページ数の都合上、その内容を大幅に割愛せざるを得なかった。特に大きくカットしたのは書誌、そして周辺分野の情報である。
 ショートショートの大陸を大空から眺めるだけなら、『ショートショートの世界』だけで充分だろう。しかし、ショートショートの大陸には、深く濁った底無し沼、鬱蒼と茂った森、広大な地下迷宮など、俯瞰しただけでは目に触れない暗黒世界も各所に点在している。さらに、『ショートショートの世界』刊行後に判明した情報もある。
 それらを皆さんにお伝えしようというのが、本稿の目的である。だからタイトルを『ショートショートの迷宮』とした。
 いつまで続けるか決めていないが、思いつくまま気の向くまま、アトランダムに書き綴っていこうと思っている。私の勘違いやミスがあれば、どんどん指摘していただきたい。

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「ショートショートの迷宮」について

 本ブログをどんな内容にしようか考えていて、ふと思いつきました。
 半村良ファンクラブ〈続・半村良のお客になる会〉の会誌「赤き酒場」は1978年の創刊以来ずっと月刊で発行されていて、最新号は今年2月発行の第374号です。私は会員ではないのですが、発行者と昔から親しくさせていただいていることもあり、毎号送っていただいています。
 2年ほど前、ひょんなことから、この「赤き酒場」に「ショートショートの迷宮」なる連載をスタートさせていただくことになりました。第1回目が掲載されたのは2007年1月号(349号)で、末永く続けるつもりだったのですが、身内に不幸がありまして、第4回(2007年4月号)で連載はストップ。あれから2年近く経ちますが、再開できずにいます。
 これをブログで再開しようかな、なんて思いました。
 とりあえず、第1回目の原稿を(その後の情報を加えるなど、簡単に修正した上で)記事としてアップしてみます。好評ならば既発表分の4回を順次アップし、それが終わったら、新たな原稿を書いていきたいと考えています。
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